2024年8月~2025年3月

概要
持続可能な社会の実現を目指す学習・教育活動のことを、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)といいます。当プロジェクトの目的は、このESDの観点から、現代のファッション産業が引き起こす環境負荷と着物のエコフレンドリーな特性を広く伝えることで、人々の着物の普段使いがどれほど促されるかを明らかにすることです。このプロジェクトは2024年度の「演習III」の中で展開され、20期生(2024年度3回生)を中心に取り組みました。また、この間のプロジェクトと同様に、今回もCAMPFIRE様のサイトにて、クラウドファンディングにより資金を調達しました。目標額を25万円に設定し、多方面にアピールすることによって、37人もの方々からその目標額25万円のご支援をいただきました。
洋服よりも仕立て直しが容易で、流行に左右されにくく、世代を超えて受け継がれる日本の着物は、近年注目を集めるサステナブルファッションとしての魅力にあふれた衣服だと言えます。本研究は、こうした環境の面から着物を再評価し、その魅力を人々に正しく伝えることで着物の普段使いが促されることを実証しようとするものであり、ファッション産業が抱える環境問題の解決と着物の伝統文化継承の双方に貢献します。
活動と成果
本研究では、着物に対する需要の大きさを測る指標として、「普段使い」の観点から比較的安価で手が届きやすいアンティーク着物、あるいはリサイクル着物(古着の着物)に対する支払意思額と、着物レンタルを含むカジュアルな着物の着用頻度に注目しました。そしてアンケート調査によりそれらを直接人々に尋ね、ファッション産業が引き起す環境負荷と着物のサステナブルファッションとしての特性を伝える前と伝えた後とで、それらの支払意思額と着用頻度の値がどれほど変化するかを分析しました。調査は滋賀県近江八幡市と京都市で行われ、近江八幡市の調査では回答者に着物姿で散策するイメージをつかんでもらうため、着物の普段使いを促すイベント「八幡キモノコレクション」を開催し、その中で全員が着物姿でアンケート調査を行いました。
加えて、今回当団体は、着物の普段使いを促すにあたって、着物の新しい楽しみ方と着物を通した学びをまとめたパンフレット「キモノオシ~キモノで遊び、キモノで学ぶ~」(フルカラー、A4巻き三つ折り)を製作し、それをアンケートの回答者に配布しました。
アンケート調査のデータを分析した結果、着物に関する環境情報を与えることで、人々の古着の着物に対する支払意思額と普段着としての着物の着用頻度は増加しました。ただし京都のような着物レンタル市場が確立している場所ではこの傾向が当てはまらず、着物の着用頻度は増えたものの、古着の着物に対する支払意思額は有意には増加しませんでした。その点ではESDの効果は限定的ということになり、環境情報の内容やその与え方に課題が残りますが、それでもESDが着物の普段使いを促す上で一定の役割を果たすことが例証されたことは重要な知見だと言えます。また、アンティーク着物やリサイクル着物を購入した経験がある人ほど、そして若い世代ほど古着の着物に対する支払意思額が大きくなる傾向も導かれました。この知見は、将来的に古着着物の市場が拡大することを期待させるものであり、環境情報だけでなく、若い世代にいかにして着物の楽しさを伝え、着用する機会をもたせるかが今後の着物の普及に向けたカギになるものと思われます。
報告書の抜粋(分析部分)は以下よりダウンロードいただけます。
なお、当活動は専用のInstagramアカウントでも随時報告されました。