近江の彩り べんがら色彩スイーツ&ミールプロジェクト

2017年4月~2018年3月

概要

当プロジェクトの目的は、その土地の歴史文化と関わりが深い「色」に着目し、その色をテーマとする食イベントがどれほど観光客をひきつけ、訪問者にどれほどの満足感を与えるのか、その効果を金銭的に明らかにすることです。2017年度は、14期生(2017年度3回生)が中心となって、昨年度の「歴史景観の町 近江八幡 インバウンド観光振興プロジェクト」を背景に、同じく近江八幡をフィールドとするこのプロジェクトを立ち上げました。担当者が2017年度に新たなゼミをもたなかったことから、この活動には、14期生15人と13期生7人の合計22名が参加しました。またこの年から学内の奨学金制度が改編されたことを受け、これまで助成を受けていた「学びのコミュニティ集団形成助成金」には応募せず、FAAVO滋賀さんのサイトにて、クラウドファンディングにより資金調達を行うという新たな試みにもチャレンジしました。目標額を35万円に設定し、メンバーの地道な広報活動によって、見事その目標額を超える354,000円の支援を受けることができました。なお、当活動は近江八幡市の公認(第2号)を受けて実施されました。


活動と成果

メンバーはまず、近江八幡にゆかりのある「べんがら」という深い赤色に注目し、その色をフィーチャーした食イベントを企画して、実際に2017年11月18日(土)、19日(日)に、八幡堀近くの町家「旧吉田邸」にてそのイベントを開催しました。イベントでは、彼ら自身が独自に考案したべんがら色のスイーツやスナックのレシピと、近江八幡とべんがらとの歴史文化的な関わりを紹介した冊子「べんがら色彩スイーツ&ミールレシピ集」が配布され、同時にその考案したメニューの一つである、地元食材をふんだんに使った「赤こんにゃくと近江牛と朝恋トマトのべんがらトルティーヤ巻」の販売が行われました。さらに、会場を訪れた方々を対象にアンケート調査を実施し、得られたデータを分析することで、イベントに参加した人々がそのイベントから得たであろう満足感を経済学的に評価することに取り組みました。

18日の土曜日は天候が悪く、トルティーヤ巻の売り上げは51食にとどまりましたが、翌19日の日曜日は天候にも恵まれ、またメンバーらの熱心な呼び込みによって122食を販売し、2日間で合計173食を売り上げました。一部関係者に割引価格で提供したこともあり、最終的な売り上げは約4万円となりました。一方、ゾーントラベルコスト法を用いてアンケートデータを統計学的に分析した結果、当イベントに参加された173人の訪問者の方々がこのイベントから得た満足感は、全体で約11万円に上ることが示されました。この結果は、その土地の色をテーマとする食イベントが一定規模の観光便益を生み出すことを実証する極めて有益な知見だと思われます。加えて、商品の売り上げだけではとらえきれない、イベントからの満足感という「見えない」部分の価値が無視できないレベルで存在することも示されており、その便益を計測することの必要性を示唆する点でも、この結果は意義深いものだと言えます。

活動の状況は、 FAAVO滋賀さんのサイトと、 Instagramにより、随時報告されました。

またこの研究の成果は、本学経済学部の学生論集に掲載されました。

  • 寺脇ゼミ有志団体「近江の彩り べんがら色彩スイーツ&ミールプロジェクト」(2019)「歴史文化にゆかりの深い「色」を楽しむカラーツーリズムの提案-滋賀県近江八幡「べんがら」をフィーチャーした食イベントの開催とそれがもたらす観光便益の計測-」『立命館大学 学生論集・3回生学生論集 合併号』第70集・第20集、立命館大学経済学会学生委員会

メディア出演