18期生の三回生論文集が完成いたしました。今年度の「演習II」においては、サステイナブルコーヒー、ワイルドクラフトコスメ、高付加価値チョコレート、間伐材を使ったケーキを対象として、それらの経済評価研究に取り組みました。
- サステイナブルコーヒーの構成要素に関する消費者選好分析
- ワイルドクラフトコスメに対する消費者評価-オーガニックコスメとの比較から-
- 高付加価値チョコレートにおける健康・環境・社会的配慮の価値評価
- 間伐材を使ったケーキに対する支払意思額の計測-木の食用化の実現可能性-
得られた知見の要約を以下の通り順にご紹介いたします。
- サステイナブルコーヒー班 サステイナブルコーヒーを構成するフェアトレード、オーガニック栽培、シェードツリー利用の3つの要素に対する支払意思額は、それぞれ順に66円(基準価格の18.7%)、110円(基準価格の31.5%)、47円(基準価格の13.4%)となり、オーガニックが最も高く評価される結果となった。この結果から、サステイナブルコーヒーの普及に向けてはオーガニック栽培に力点を置くことがカギとなり、「サステイナブル」と名の付く商品・サービスの今後の展開に向けて、環境を重視することの必要性が提案される。
- ワイルドクラフトコスメ班 普通の化粧水を基準としたときのワイルドクラフト化粧水とオーガニック化粧水に対する支払意思額の平均値はそれぞれ基準価格の54.2%、55.6%となり、それらの間に大きな差は見られなかったが、実際にその化粧水を使ってみることで、各金額は約25%上昇することが示された。この結果から、試供品の提供や店頭での試用によりこうした環境・健康配慮型コスメ商品の市場拡大が見込まれる。加えて、支払意思額の分散も増加しており、それは試用によって人々の環境・健康配慮型化粧水に対する選好の多様性が現れたことを含意する。
- 高付加価値チョコレート班 多様化する高付加価値チョコレートについて、健康問題に配慮した「高カカオ」、環境問題に配慮した「オーガニック」、そして社会問題に配慮した「フェアトレード」の各要素の価値を計測したところ、それらの金額はそれぞれ順に43円(基準価格の12.4%)、97円(基準価格の27.8%)、71円(基準価格の20.2%)と計測された。サステイナブルコーヒーと同じくオーガニック(環境配慮)が最も高く評価される結果となり、食品企業が取り組むCSR活動として、それを利益につなげるという点では、環境配慮に注力すべきだと提案される。
- 間伐材ケーキ班 普通のパウンドケーキを基準としたときの間伐材の粉から作られるパウンドケーキに対する追加的な支払意思額の平均値は-10.6円(基準価格の-8.8%)とマイナスに評価されたものの、間伐により森林の公益的機能が発揮されることを情報として与えると、その金額は10.7円(基準価格の8.9%)にまで上昇し、その評価はプラスに転じた。しかしながらその食味の情報を与えると、支払意思額の平均値は-26.1円(基準価格の-21.8%)と大きく低下する結果となり、その普及に向けてはとりわけ食感の改善が必要であることが示された。