2021年度の三回生論文集が完成しました

10月の話になりますが、17期生の三回生論文集が完成いたしました。今年度の「演習II」においては、大豆ミート、エシカルファッション、グルテンフリー、町家・古民家カフェを対象として、それらの経済評価研究に取り組みました。

  • 大豆ミートに対する支払意思額と環境・健康・食味情報提供効果
  • エシカルファッションの構成要素に関する消費者選好分析
  • グルテンフリー・スイーツに対する消費者評価とその市場拡大の可能性
  • 歴史地域における町家・古民家カフェの価値評価―金銭評価と時間評価―

得られた知見の要約を以下の通り順にご紹介いたします。

  • 大豆ミート班 普通の牛ミートバーガーを基準としたときの大豆ミートバーガーに対する追加的な支払意思額の平均値は、大豆ミートの健康増進効果を情報として与えることで、情報提供前の-33.4円(基準価格の-22.3%)から-9.8円(基準価格の-6.5%)に上昇し、さらにその環境保全効果を伝えれば、支払意思額は-1.8円(基準価格の-1.2%)まで上昇して、両者はほぼ無差別になる。しかしながら、大豆ミートの食味情報を与えると、その支払意思額は情報提供前の水準にまで低下するため、その普及に向けては食味の改善が必要だといえる。
  • エシカルファッション班 綿と羊毛からなるセーターを事例に、エシカル商品を構成するフェアトレード、オーガニック素材の使用、リサイクル素材の使用、動物福祉への配慮の4つの属性の価値を金銭的に計測したところ、動物福祉への配慮が2857円(基準価格の57.1%)と最も大きく、ついでオーガニック素材が2245円(基準価格の44.9%)と2番目に大きな値を示した。一方で、その他の要素はゼロと有意差がない結果となり、エシカル消費における人々の関心は、動物や生態系など人間以外の対象に向かいつつあることがうかがえる。
  • グルテンフリー班 米粉バームクーヘンに対する追加的な支払意思額の平均値は、グルテンフリーを支持する理由を伝えることで68.3円(基準価格の6.8%)から214.0円(基準価格の21.4%)にまで上昇するが、支持しない理由を与えると、その金額は35.2円(基準価格の3.5%)にまで低下する。この結果は、情報の偏在による市場の歪みを是正する上で、中立な情報の提供が重要であることを示唆する。一方で米粉バームクーヘンの食味情報を与えると、その支払意思額は大きく上昇し、普通のバームクーヘンとの間の実際の価格差とほぼ等しくなる。
  • 町家・古民家カフェ班 歴史的な街並みの中にある「和」のカフェの要素として、町家・古民家、和風の近代建築、和スイーツの提供、和食器による提供の4つに注目し、それらの価値を金銭的に計測したところ、町家・古民家が最も大きく、ケーキセットの価格でみて492円(基準価格の36.4%)となった。これは、文化財保護の観点から町家や古民家をカフェとして活用することの意義を定量的に示すものである。また町家・古民家カフェを訪れるのに犠牲にできる時間を金銭換算した値は492円を下回る結果となり、それは人々が歴史的町並みを抜けてそのカフェを訪れることにプラスの価値を見出すことを含意する。

現在取り組んでいる「米粉スイーツ&古民家カフェによる日本の原風景の継承プロジェクト」は、上記のグルテンフリー班と町家・古民家カフェ班の研究成果を発展させたものになります。

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